02.05

ど真剣やで~福永正三先生随聞記~1
「おまんは、わしの阿難になれ。阿難尊者はお釈迦さまの侍者として、常に説法を聞いていた。おまんもわしの侍者なんだから、わしの説法を後世に伝えよ」
「仏教経営者塾」専任講師・故福永正三先生の鞄持ちを5年間務めた秘書が書き留めた随聞記。
第1回 あんたは教会で徳を積め
教会長を通して、福永先生に経営指導を懇願するご婦人がいました。親御さんが残した土地でスナックを始めたが、閑古鳥が鳴く毎日。なんとかしてほしいとの相談です。
軽自動車で案内された店舗は住宅街。「こんなところで客商売は無理だろう」と思いました。店舗の中をじっくりと観察された先生は、こんなところにこんなものを置くな!これはこうしろ!ああしろ!と事細かく指導し、「若い女の娘をひとり雇いなさい。ひとりでいい。あんたは店に出なくていい。毎日、教会で徳を積め。ええか、ど真剣にやるんやで」とおっしゃいました。
帰りの電車の中、私は先生に尋ねました。
秘書 ただでさえ赤字なのに、人を雇ったら、もっと赤字になるじゃないですか。どうして、あんな指導をされたのですか。
福永 おまんがいないときに、わしはあの人の人生を聞かせてもらった。若いころに離婚して、3人いた娘さんたちは次から次と家を出て行ってしまったそうや。あの人からは人が離れていく。そういう人が客商売をやっても、うまくいかんのや。
半年後、私は一人でお店を覗きにいきました。びっくり仰天!午後7時というのに満席で、お店はてんてこまいでした。ご婦人は、その後も教会でお役を務め、経営を伸ばす精進をされているそうです。
筆者紹介
竹嶋克之(たけしま・かつゆき)
「六花の会」事務局員。同じ寅年、阪神タイガースファン、下戸、甘党が気に入られ、福永正三講師の指名で秘書を務める。福永講師と全国を旅し、立正佼成会の「仏教経営者塾」を運営した。また、福永講師がコンサルを務めた盛和塾(稲盛和夫塾長、2019年閉塾)経営者とのネットワークづくりも担った。