02.28
【本のご紹介】伝えることから始めよう
ジャパネットたかた創業者 髙田明さんの一代記。
面白い。
経営指南書は沢山読んできた自負がある。しかし、この本は特別だ。
キッカケは、企業セミナーでの講演。テレビショッピングで観る髙田さん、そのまんまが、楽しそうに喋っていた。
楽しそう。これは本物だ。
自分の仕事を「楽しく語れる」。こんな嬉しいことはない。
過去は宝。今は感謝。そして、未来は薔薇色。
こんな言葉が浮かんできた。聴いている私が嬉しくなってしまう講演だったのだ。
数多の講演を聴いてきたが、聴いていて、嬉しくなってしまうお話は、なかなかない。もちろん、感心や感動はある。しかし、共感させ、「嬉しい」という感情にまで誘うお話は、そうは聴けないのだ。ジャパネットたかた成功のポイントは、ここにあると確信した。
かつて、映像製作やイベントに取り組んでいたとき、髙田さんの哲学を、引用させていただいたことがある。SONYの「ハンディカム」。手のひらサイズのビデオコマーシャルに込めた想いだ。
当時、高額なビデオカメラを宣伝する際、新機能を紹介するのが定番であった。しかし、ジャパネットたかたは違った。
製品の機能を紹介するのではなく、
新商品を手にすることによって、得られる喜び・幸せを伝えたのである。
その映像は、いまでも鮮明に覚えている。
髙田さんは、SONYの「ハンディカム」を社員に与え、好きな映像を撮らせた。多くの社員が子ども中心の家族を撮影。その映像を、ビデオカメラの説明の際、TV画面に流したのだ。これなのである。
人は、商品を買うことで、自分の人生を豊かにしようとする。自分では気づかない願いや夢もある。それをジャパネットたかたの広報は目覚めさせる。次の瞬間、電話をかけて注文する自分がいる。商品の価格ではない。人生の願いや夢の重さが、消費者の購買行動に決定的な影響を及ぼすのである。
私は自分のチームに伝えた言葉がある。
映像製作の上手い下手ではなく、
観る人が、人としての喜びを感じられる内容にしていこう。
それを製作することが、私たちの使命です。
本書から髙田さんの言葉を重ねる。
私は、自分に人並み外れた才能だとか発想力やアイデアを生み出す力があったとは、まったく思いません。私がやってきたことは、経験を積めばだれにだってできることです。もちろん、できない人は最後までできないですけど、それには理由があるんです。だれだって、本気になって仕事をして経験を積んで、そして、本を読んだり人に話を聞いたりして勉強して、それを積み重ねていけば、できるようになりますよ。できないのは、まだ、本気度が足りないからじゃないでしょうか。
どうしてできるかと言えば、本気でやっていれば勝手に課題が見えてくるんですよ。課題が見えてきら課題に向かう自分がいて、その課題を超えようと思ったらアイデアが出てくるんです。本当ですよ。私に他人と違ったところがあったとすれば、いつも目の前のこと、今やるべきことに、全身全霊を注いできた。常に自分の力を200%、300%の力を注いできたことだと思います。「今を生きる。」です。
髙田さんは、次のようにも語っている。
私は、やらなかった失敗はあっても、一生懸命にやった失敗はない。
そのパッション(使命)については、こう述べている。
コミュニケーションで最も大事なことは、
『伝えること』ではなくて『伝わること』だと思います。
伝えるコンテンツのラインナップを揃えることも大切だが、「伝わること」に仕事の重点を置きたいと思う。髙田さんが、私の次を見せてくれた。
本のご紹介
ジャパネットたかた創業者
東洋経済新報社
定価 1760円(税込)