2019
10.18

これまでの仕事での失敗から学んだ人生やマネジメント(佐藤武男氏)【3/3】

分かち合い

11.高い志、情熱、謙虚さ、素直さを持って行動することで道は開ける

 経営者は日本や世界のために貢献したいという高い志(大志)を持つことが特に大事です。そして自分の理想への使命感をしっかり持ち、世の中の一隅を照らす人になること、そのためには世の中の動きをよく勉強し、自分の得意分野を持ち、この分野では負けないという実力をつけることです。お客様を喜ばせたい、世の中で困っている人を助けたい、人の為に頑張るとエネルギーが大きく出るものです。

「情熱が無ければ、夢のある大きな仕事は成就できない」。
「常に改善・向上し、学び続けようとする姿勢を持ち、また自分だけの力で成功したとおごらない謙虚な心を持つ。周りの人に感謝できる心の余裕や、小さなことに感謝できる心を持つ」こと。「喜び上手は幸せ上手」になる。「愚痴をこぼすと幸せが逃げる」。仕事中いつも愚痴を言う人には人が寄りつかないものです。仕事で大きく伸びる人は皆、素直な心を持っていて、人の意見を先入観なく受け入れてから自分なりに信念に基づき、応用できる人です。

12.経営者は、直言してくれる人を大事にし、自らの過ちに気づく

 経営者は「お山の大将になりがち」です。トラブルや不祥事や顧客からのクレームなど悪い情報は部下が忖度して中々報告せず、どうしようもなくなってから報告することが多いものです。

 経営者は心して、まだ生煮えでも、悪い情報はまずは一報をあげさせ、原因の究明や再発防止はその後進めることで良いとしなければいけません。部下が悪い情報を早く報告しようとしたのに、社長がその際、「どうしてこんなことになったのか」「原因はどうなっている、だれの責任だ」「どうしたら再発を防げるのか」を同時に言ってどなってしまうと、実態把握、原因究明、再発防止策を作ってからでないと怖くて社長に報告できなくなります。

 普段から社長には、直言してくれる部下を大事に尊重すべきです。社内にそういう人がいるのが望ましいですが、ケースバイケースで、社外の人、例えばコーチングやコンサルタントや社外取締役などに、悩んだ時に相談でき、悩んでいなくても自らの振る舞いにこうしたほうがよいと気づきを与えてくれる人が必要です。欧米では社長専属の社外のプロのコーチがついていて、月に1回程度、2時間程度対話をして、社長との対話により会社の課題や自分の心の葛藤などをさらけ出し、自分の心を見つめ直し、心の奥にある潜在意識を掘り起し、気づかせ、欲を取り除き、垢を落とすコーチングが一般的になってきています。

 人は知らず知らずのうちに他人に迷惑をかけていたり、部下の心を傷つけていたり、自社の製品やサービスを過信し、お客様に対し上から目線になっていたりします。時には経営者も業績重視のあまり、コンプライアンスにグレーでも、目をつぶり暴走するなど誤りを犯しがちです。
「人は誤りを犯すもの」という前提に立てば、考え方が間違っていることを指摘してくれる部下や第三者を身近に持ち、自ら過ちに気づく環境作りと度量が重要です。

13.会社や組織に入ったら自分の力を自分で評価してはいけないと部下を指導する

 部下には、会社に入ったら、自分の能力の評価は自分でするものではなく、他人が評価するものと教えることです。組織や周りの人からどれだけ必要とされているかが評価の基準になるのです。自分で自分の能力は高いと評価しているうちはまだまだといえます。

部下の中には「私はこんなに実績を挙げているのにどうして昇進できないのか」などと言ってくる人がいます。しかし会社は本人の実績だけではない部分を上司や周りの目や人事部の目でじっくり観察しているのです。具体的には、新しいことに挑戦しているか、情熱があるか、逆境での粘り強さがあるか、企画実現力、反対派を説得し他の人を巻き込んで結果を出すリーダーシップ、協調性、豊かな人間力を持っているかどうかなどを総合的に見ているのです。その辺を若いうちにきちんと教え込むことが大事です。

14.経営とは革新と伝統の連続である

 日本の企業で創業から100年以上続いている長寿企業は、33259社(2019年)あります。これは世界1位です。創業200年以上の企業も2018社あり、世界2位のドイツより多いです。さらに創業1,000年以上という企業は7社もあり、最も古い会社は、聖徳太子に命じられて四天王寺の建立に携わった宮大工の会社で金剛組であり、実に1441年の歴史を有しています。日本の企業は歴史の古さでも、社数でも世界第1位なのです。

 重要なことは、「変化をさせてはいけない伝統を守りつつ、時代や顧客のニーズの変化に合わせて革新を常に行う」ことです。時には初心に戻ることも大切です。その理由は、創業期には必ずなにか優れたところが存在したはずだからです。そのような長所がお客様に受け入れられたからこそ、今日の隆盛とブランドがあるのです。

 創業5年以内に35%が消え、創業50年を迎えることができる企業は5%となっています。近年は廃業率のほうが開業率よりも上回っているので、企業数は減少傾向にあります。創業から現在までの企業の平均業歴年数は40.5年です。
経営とは革新と伝統の連続であると、考えて仕事をしていくことが大事です。
時代の変化、お客様のニーズの変化、環境の変化に柔軟に対応し、それまで培った技術やサービスを活かしつつ、全く新しい商品の開発や新規販売の開発など革新的な経営をしてきたので、存在価値のある会社として生き残ってきたのです。「革新」と「老舗」は矛盾するものではなく併存できるものです。

 羊羹など高級和菓子で有名な虎屋は、創業が1562年と室町時代です。1560年に桶狭間の戦いがあり、その2年後に創業しました。実に織田信長が今川義元を破った頃です。業歴は457年にもなります。
室町時代から歴代天皇や宮家への御所御用菓子屋として京都で定着し、「みやび」な文化を伝える和菓子として評価を確立してきました。明治に天皇の東京遷都に伴い虎屋は東京に本店を移しました。 経営理念は「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く。和菓子を通して日本の文化や魅力を伝える」ことにあります。虎屋は終戦後の物不足の頃は、羊羹の材料も機械もないので、喫茶店とパン屋をやってなんとか生き延びてきたのです。

 虎屋は伝統の味であるあんこをベースにした和菓子に安住することなく、時代や若い人にもっと受け入れてもらうよう常に革新を図っています。例えば六本木ヒルズ内にある「TORAYA CAFÉ」がそうですが、そこでの菓子のコンセプトは「和と洋の良さを引出しながら、和菓子のアイデンテティーを持ったケーキや菓子」です。例えば、あんとチェコレートを混ぜたパウンドケーキのような「あずきとカカオのファンダン」の味はおいしいです。また抹茶とホワイトチェコのソースがかかった「豆乳と白小豆の葛ゼリー」も人気があります。形は洋菓子でも、和菓子の伝統である「あん」や「小豆」が活かされています。
虎屋は、単に流行を取り入れるのではなく、新しいものを取り入れながらも、その本流や伝統を変えずに創意工夫し、現代に合った和の価値を発信していくという意気込みがあります。「伝統は革新の連続である」との理念を有し、常にイノベーションを繰り返しています。
1805年に作られた「掟書」(おきてがき)には、社員は製造の品質の維持や社員同士のチームワークや指導教育の徹底と自己研鑽など自主性も重んじることが書かれてあり、そうした家訓を守りつつ、時代の変化に対応してきたのです。常に「革新」を続けてきたので、「老舗」企業として生き残ってきたところに経営のヒントがあると思います。

略歴

氏名
佐藤 武男(さとうたけお)  1954年、東京都出身、64歳、

職務
グローブシップ株式会社 常務取締役 管理本部長:ビルメンテナンスサービス
グローブシップ・ソデクソ・コーポレート(株)取締役:フランスの企業との合弁会社
株式会社保全エージェンシー 代表取締役社長:工事など損害保険の代理店業務
   
学歴
1978年3月、慶応義塾大学法学部政治学科卒業、マックスウエーバー研究、政治理論
1985年3月、慶応義塾大学大学院経営管理研究科修了、修士(MBA取得)銀行派遣

主な業務経歴
1978年 三菱銀行(現在三菱UFJ銀行)入行
    東京駅前支店、浅草橋支店勤務にて貸付、預金、外為に従事
1985年 国際企画部、調査役(海外戦略、収益施策・管理ほか)
1987年 香港支店企画管理課長(計数企画、店舗企画、総務、経理、事務等)4年
    九龍支店非日系課長(華僑取引推進等)2年
1993年 国際業務部 総括グループ次長(貿易業務の企画や営業推進ほか)
1997年 ロスアンゼルス支店 副支店長、ユニオンバンク部長兼務(日系部門)
2003年 グローバルサービスセンター 所長(貿易の事務、管理、与信、貿易システム等)
2006年 三菱東京UFJ銀行 外為事務部 理事 部長(貿易業務の企画、事務管理等)
2009年 三菱東京UFJ銀行退職、株式会社ビル代行入社、常務取締役
2010年 ビル代行 常務取締役 管理本部長
2015年 グローブシップ株式会社(社名変更) 常務取締役 管理本部長、現在に至る。
2016年 グローブシップ・ソデクソ・コーポレート(株)取締役兼務、現在に至る

所属の研究学会
「日本貿易学会」、「国際商取引学会」、「国際ビジネス研究学会」 正会員

主な著書等
・佐藤武男ほか共著(2014)『新 貿易取引―基礎から最新情報までー』経済法令研究会
・佐藤 武男・中村中共著(2013)『貿易電子化で変わる中小企業の海外進出』 中央経済出版社

趣味
水泳(大学時に東日本学生選手権で背泳3位)、旅行(国内外)、学生指導、ギター弾き語り

その他
国際経済や外国為替論や経営学などについて、週末に大学で講義なども行っている。

Photo M.Uchida