2021
07.11

【佼成新聞】取材ノート・「もう少し頑張ろう」と前へ「六花の会」メンバーがコロナ禍の中 経営者同士で手を携え模索続ける

お知らせ, 佼成新聞DIGITAL

6月中旬、佼成病院に6日間で計600食の弁当が届けられた。新型コロナウイルス感染症の治療で奮闘する医療従事者のためにと、健康食品販売業を営む後藤秀彰さん(63)=杉並教会=が、自社の社会貢献事業の一環として寄付したものだ。

弁当は中里浩士さん(49)=中野教会=が営む飲食店で作られた。都内で6店舗を経営しているが、コロナ禍の影響で売り上げが激減し、昨年から仕出し弁当の販売を始めた。

二人は、仏教精神を経営に生かすための本会会員(有志)によるネットワーク「六花(りつか)の会」のメンバーだ。後藤さんは、同ウイルス感染症の治療にあたる医療従事者は激務が続いていると聞き、彼らへの敬意と感謝を示したいと考えていた。同時に、飲食店は昨年から厳しい経営環境に置かれており、生き残りをかけて業態変革に挑む中里さんを後押ししたいとの思いもあったという。中里さんは、「医療従事者とサンガを思う後藤さんの期待に応えたいと、一生懸命に作りました。頂いた応援を心の糧にし、コロナ禍を乗り越えたい」と話した。

各地の六花の会でも、コロナ禍の中でネットワークを生かした取り組みが行われている。酒店を経営する宮村和利さん(64)=金沢教会=は、観光バスや葬祭業者からの注文がなくなり、売り上げが半減した。そこで、宿泊施設や飲食店に商品を卸せなくなった地元の酒蔵と協力し、石川の珍味である「ふぐのぬか漬け」と地酒をセットにした商品の通信販売を始めた。しかし、期待した売り上げには届かず、大量の在庫を抱えた。商品を効果的に宣伝できなかったことが原因と宮村さんは話す。

現状を聞いた北陸六花の会の永原伸一郎代表世話人(55)=金沢教会=は、本部事務局や各地のメンバーに相談。すると、メンバーがそれぞれ、「おうち時間やオンライン飲み会にぜひ」と宣伝してくれ、次第に全国から注文のメールが寄せられるようになった。メールには「応援しています」「頑張ってください」というメッセージも添えられていた。各地の「仏教経営者塾」でも、宮村さんたちの地酒の評判は良く、味わったサンガからは「自宅にいながら石川へ旅行に行った気分になれる」との声が聞かれる。

宮村さんは「皆さんの温かな言葉が励みになりました」と感謝を口にする。自身も〈人を勇気づける存在になりたい〉と思い立ち、今、毎日必ずサンガに電話をかける「思いやりコール」の実践を続けている。

六花の会は、各地で仏教経営者塾を開催しており、経営上の悩みを抱えるサンガが孤立しないよう、メンバー間の交流に力を入れてきた。取材を通して、「経営者は責任感が強い半面、人に弱みを見せない傾向がある」と聞いた。そうした経営者が胸襟を開いて、自身の体験を赤裸々に語り合えるのは、同じ信仰を持ち、経営を通して社会に貢献したいと願っているからだとも教えられた。コロナ禍により先行きが見通せない中、同志と語り合い、「もう少し頑張ろう」と前を向く――そうした場を、六花の会はつくっている。(須田記者)

《2021年7月11日付・佼成新聞2面》