2023
12.08

長崎教会「六花の会」仏教経営者塾学習会 ピンチを克服する「長崎の元気の素」

お知らせ

立正佼成会長崎教会の「六花の会」による仏教経営者塾が11月26日、長崎市のホテル会場で開催され、長崎教会会員だけでなく、県内外の経営者や個人事業主など約75人が参加した。
「六花の会」は、仏教精神を生かした経営を目指し、2018年に発足した本会会員(有志)による全国的なネットワークであり、長崎教会では今回、第2回目の学習会が行われた。

当日は、主催者挨拶、顧問である出射優行長崎教会長による長崎市長からのメッセージ紹介と挨拶、長崎前市長・長崎地域力研究会代表 田上富久氏による講演ののち、長崎市議会議員・山﨑猛氏がファシリテーターを務め質疑応答を行い第一部を終え、第二部では同ホテルにて懇親会を行った。

第一部では、主催者挨拶で長崎六花の会会長・山中正男氏が、「六花の会」が仏教の六つの徳目である六波羅蜜を象徴しており、経営者一人ひとりが六波羅蜜を実践し心を高め経営し、広く社会に貢献する願いが込められていることを説明した。これに加え、今回の学習会は視野を拡げて、長崎の地域経済、産業の発展、あらたな起業や事業承継の可能性を開くという願いを持って、長崎の元気の素は何か?について、みんなで考え学びあいたいと挨拶した。

次に長崎六花の会顧問・出射優行長崎教会長により、鈴木史朗長崎市長からのメッセージ代読が行われた。メッセージの中で、長崎市が今100年に一度のピンチでもあり、チャンスでもあるという極めて重要な節目にあること、長崎市が現在直面しているピンチは人口減少であり、今現在各地で進めている再開発などを活用し「力強い経済の再生」と「少子化対策」の二つを車の両輪として回しながら取り組むことで人口減少を克服したいと考えていること、即効性の高い施策として、交流による経済活性化を図っていることなどを紹介した。
顧問挨拶では、参加申し込みに際して参加者に「長崎の元気の素は何か?」のアイディアを募集し、約30のテーマで、104のアイディアにまとめ、配布した冊子にイラスト図付きで記載していることを説明し、寄せられた内容を見て今回の学習会へ関心を持っている思いを実感したことや、講師を務める田上前市長もその内容を読み、講演内容を一部修正してくれたことなどを述べた。

田上前市長による講演は約60分でパワーポイントを使い、16年にわたり長崎市政(いわゆる長崎市の経営者)に取り組んだ「まちづくりの哲学」とそれを実践してきた経験から「長崎の元気の素は何か?」という話をしていただいた。
まちづくりの原点として大分県の湯布院をあげ、自然豊かで静けさを宝にしたリゾート温泉療養地を目指し発展した湯布院を、自身の街づくりの原点としたことや、世界第二位の狭さを誇るモナコが、地の利を活かし、天の時(時流)の計らいに乗り、人の和(その町の人々が協力し合って)を活かし取り組むことで、公道をつかって行われるモナコグランプリを開催し、特徴あるまちに進化してきた事例などをあげた。その上で長崎にも忘れていた宝物(世界遺産登録された軍艦島など)があることや、他を羨むより個性を強みにすることに気づいたという。
ものごとの見方の基本として、安岡正篤先生の思考の三原則を紹介。まちづくりも、短期的より長期的に見る、一面的より多面的に見る、枝葉末節より本質的に見るという三つの見方で取り組んできた。新たな森を創ろうとして一度に成木を受けても、一旦台風などが来ると倒れてしまう、という例え話を用いて「悠々として急げ」という言葉を教えてくれた。
長崎のまちづくりの進化論では、①まちの形、②支える仕組み、③経済の三つの分野が進化することとし、眼鏡橋や平和公園のライトアップ事業や、周辺7町との合併によって1.7倍に拡がった長崎のために地域にある程度の権限委譲をし、市役所が地域を応援するというボトムアップに変更するなどの改革を進めてきた。また経済面では、これからの成長可能分野として、①情報、②海洋ものづくり、③生命科学、④交流の四つの分野を成長戦略としたことにより、「昭和の観光都市」から「21世紀の交流都市」へ進化していくことにより、訪問者・事業者・市民の三者がウィンウィンとなる(三方良し)まちづくりの方向性が見えてきたという。

具体的な話としては、地の利として、東京とも福岡とも違う世界的なローカル都市として強みを活かすこと。長崎のまちの特徴を活かした「長崎さるく」などを実施し、自身も案内役をやってみたことなどを話された。天の時として、様々な社会のOSが変わる時代において、今までのやり方だけに固執せず、まずやってみる・半歩を踏み出すこと。人の和として、世代間コラボ、つながること、異業種交流(六花の会のような)新しい発想が必要であることとし、事例として長崎の観光地として有名な出島から取り、さまざまな取り組みのパイロット事業としての【出島】プロジェクトが発足したことを述べられた。
そして「長崎まちづくりの元気の素は何か」について、それはやはり、【人】であるとし、皆さんと共に小さな半歩(家の周りの掃除など)でも新しいことに挑戦したい、そんな未来づくりに頑張っている人を応援していきたいと話された。

講演後は長崎市議会議員である山﨑猛氏をファシリテーターに迎え、参加者が直接、田上前市長に意見や質問をする場が設けられた。
長崎の再開発が湾岸エリアで進められていて、昔からの繁華街であるアーケード地域が退廃していることに関してどう感じているか、という問いに対しては田上氏・山﨑氏ともに「むしろ可能性がある」とし、中心地域でも新たな開発に取り組んでいることを明かした。しかしそれが市民には知られていないことも多く、発信力を今後の課題と捉えていた。
次の質疑ではその点に触れ、SNSが広く浸透している現代において、一市民が発信できるツールが溢れているものの、何をどのように発信するのが良いのか、という質問が起こった。前述のとおり、ひとりひとりが半歩踏み出し、小さなことをそれぞれが行うことが大きな波を生むことを話された。
とあるプロジェクトに参加している参加者の意見の中では、同プロジェクトを共に取り組んでいる山﨑氏が、長崎にはまだまだ魅力がたくさんあることを熱く語った。

こうして大盛況のもと、第一部の講演会は幕を閉じ、続く第二部にて懇親会が行われ、第一部から引き続き39人が参加した。
懇親会では参加者同士の交流を深め、講演会での振り返りや感想などを述べた。次回開催を希望する声や、長崎経済産業発展へそれぞれの場での実践を誓い、有意義で活発な懇親会となった。

講演会後に参加者に記載してもらったアンケートでは、長崎の今ある魅力を再発見することが出来た、一歩踏み出すと次が見えてくると思えた・まず挑戦することの大切さを学んだ、一歩目を進んだ者だけが二歩目が見えるということばが響いた、会社内の社員教育に大きなヒントをもらえた、天地人をいかしたまちづくりと目標(北極星)を見出して、一歩一歩前進することを学べた、人件費をコスト経費ではなく人への投資というところを今後に活かしていきたい、長い目でみる・多面的にみる・本質的にみる思考の三原則が大事だと学べた、などたくさんの感想が寄せられた。

田上講師も、「参加者の聞く姿勢が素晴らしかった。是非、同会に参加したい。」旨を表明してくれた。今回の大盛況を踏まえ、今後も第3回目の実施を計画していく。

報告 長崎教会「六花の会」代表世話人 幸 利昌