2023
07.01

【本のご紹介】名古屋名物みそかつ矢場とん 素人女将に学ぶ「脱・家族経営の心得」

つなぎあい

 「素人女将」とは、令和5年9月30日『六花の会・会員の集い』に、ご登壇いただく鈴木純子さんのことだ。

 熟読いただきたい本書は絶版。しかし、ネットでは、すぐに中古で購入できる。ぜひ、入手してほしい。それだけの魅力が本書にはある。

 商売のことは何も知らない女性が、「とんかつ屋」という名古屋の個人商店に嫁ぎ、店舗を拡大。年商を二桁の億を数えるまでに成長させた物語だ。

 経営者であろうが、商売人でなかろうが、どんな人にも通じる「人としての生き方の心構え」が描かれている。市井の人の体験が「個人経営者必読の書」になった。

 「女将の言葉から学ぶ成功の心得」は、現代人にも十二分に通じるメッセージ性がある。本書の入手が難しい方のために、その「心得」を箇条書きしてみた。長文だが、ひとつひとつを、じっくりと噛みしめて読んでいただきたい。『会員の集い』に参加希望の方は、事前資料として、読み込んでいただきたい。
 

■改革の心得

・四面楚歌、八方ふさがり。小さな夢が、前進する力を与えてくれます。
・制限の中で、最大限の工夫をする。そのとき、究極のアイデアが絞りだされます。
・メニューとは、店の戦略書である。
・改革は、一人ででも始めること。小さな一歩でも、繰り返すことで変化が生まれます。
・「家業」が「企業」へ進化するには、現金商売の落とし穴に陥らない覚悟が必要です。
・意識改革は、痛みを伴うもの。それは、社員ではなく、経営陣が痛みに耐えることから始まります。
・ビジネスライクなつきあいとは、決して冷たい関係ではなく、共存共栄の関係づくりです。
・改革に必要な人材は、若者、外者、または変人と言われます。改革には、それを受け入れる度量が必要です。
・会社の通帳と印鑑は誰が持つか。それが、会社の生命線です。
・リーダーの言葉は、大切です。しかし、リーダーの働く背中は、もっと大切です。

■経営者の心得

・自分の心の弱さを映してくれる鏡の存在が、経営者には不可欠です。
・極端に違うように見えるものでも本質は同じだったりします。
・大胆さとは、日頃の繊細さの終着点にあるものです。
・割り引きの発想よりも、割り増しの発想が、収入を守ります。
・売り上げは、経営者のものでもありません。「経費で落とす」の発想は、売り上げを自分のものだと思っている証拠です。
・会社の儲けをどのように社員に還元するか。それは、社員への感謝の気持ちを表す重要な機会です。
・事業の拡大を考える際に、まず取り組むべきことは、これまで続けて来た仕事の効率化です。
・自ら非を認める勇気と、変わる勇気は、事業の存続には欠かせません。
・しっかりとリスク分散をしておくこと。これは、起業の存在に不可欠なリスク管理です。
・経営者に必要なのは、勝利欲ではありません。人として平和に生きるための哲学です。

■商売の心得

・なぜ儲けたいのか。その意味をとことんまで突き詰めることで、会社のめざすものが見えてきます。
・カリスマ的なお店が一店舗あっても、商業施設は繁栄しません。それぞれの店舗の総合力で、施設の魅力が決まります。
・自分の欲を捨てたとき、お客様がビジネスチャンスを与えてくれます。
・売り上げよりも大切にしなくてはいけないのは、お客様との一期一会の気持ちです。
・お客様への愛情とは、お客様と店が共に高い水準で求めることです。
・心からのサービスと、形だけのサービス、それは、見た目だけでは、区別することはできませんが、必ずボディブローのように響いていくものです。
・感謝の心を込めたサービスは、気がつけば、「戦略」と呼ばれていることがあります。
・「名物」「老舗」とは、変わらないことを意味するのではなりません。常に時代に受け入れられる存在であることを意味するのです。
・商売人とは、相手に合わせて、相手の懐に入るのが上手な人でありながら、決して、人に流されない人のことです。
・経営者にとっての宗教とは、依存ではなく、常に立ち戻る原点です。

■人財育成の心得

・従業員は、会社の成長を支える仲間です。そして、彼らの成長を支えるのが経営者です。
・他人から技や智恵を学ばせていただく姿勢が脱マニュアルの第一歩です。
・対話とは、互いの共通点を見いだす技法。だからこそ、顧客としての体験は、お客様と
 の対話に不可欠なのです。
・忙しいお店は、お客様の協力が不可欠。けれども、それがあたりまえだと思ったとき、
 お客様は去っていきます。
・タイトルを得ることは、従業員にとって、達成感を得ると共に、次なる課題を見いだす
 機会でなくてはいけません。
 ※「矢場とん」では人事評価による階級を「タイトル」と称している。
・社員を人間として育て、支えるためには、職場の常識を教えるだけでは、不十分です。
・経営者の人生観の限界が、従業員の人生観の限界になります。
・会社を支えているのは従業員だけではありません。従業員を支える家族もまた、会社
 を支える存在です。
・日報制度が続くかどうか。それは経営者の従業員に対する思いのリトマス試験紙です。
・メディアは同士。志の異なるメディアとは、つきあうべきではありません。

■事業承継の心得

・後継者を決める時、大切なのは、その人の能力よりも、経営者になる覚悟の有無です。
・幹部に仕事を任せることができたとき、経営者は、優しい社長になれるのです。
・教育とは、格闘による、信念の伝承です。
・子供に本音を語れるのは、母親の特権です。
・価値観が違っても、共に歩み続けられるのは、相手を人間として信頼しているからです。
・堪え難い試練を乗り越えるとき、誰も悪者にしないこと。そうすれば、再びみんなで登
 るべき道筋が見えてきます。
・全力で走っていると、なかなかまわりのことは見えません。節目とは、見えなかったも
 のを見る機会です。
・潔い引退の決意は、全力で仲間の成長を支えてきた経営者だからこそできることです。
・伝承とは、今あるものを伝え続けるのではなく、それが生まれてくるまでの紆余曲折の
 根底にある精神を伝えるものです。
・パートナーと共に歩むために必要なものは、互いに対する感謝です。

鈴木さんに初めてお会いしたとき、私はこう問うた。

「なぜ、改善しようとしたのですか」

鈴木さんは即答した。

「あたりまえの会社にするためです」

お答えの中に「困難に対する腹構え」が凝縮されていると感じた。

鈴木さんの「女将の言葉から学ぶ成功の心得」。『会員の集い』でも、みなさんと分かち合えることが楽しみでならない。

本のご紹介
名古屋名物みそかつ矢場とん
素人女将に学ぶ
「脱・家族経営の心得」
藤沢久美著

幻冬舎メディアコンサルティング