05.15
【本のご紹介】アサヒフォージ外伝 白鳥工場の革新 孤高のクラフトマン 朝日澄雄
この本は、自動車の駆動部分を支える重要な保安部品である、ベヤリングやトランスミッションギヤなどを製造する、現、アサヒフォージ株式会社白鳥工場の工場長として、工場環境や業務改善に挑戦し続けた朝日澄雄さんの自伝である。
彼は本文の最後に語る。「白鳥工場が郡上で一番の会社になったら、周りがきっと尋ねてくる。朝日鍛工の一番小さい工場が、なんでこれまでの企業になったんだ?と。その時に僕は『法華経がそこにあったからなんだよ』と胸を張って答えたいと思っていた。僕が、立正佼成会の庭野開祖さまの教えの証明役になりたかったんです」
彼の夢は実現する。アサヒフォージ白鳥工場の発展に尽力したひとりの男は、信仰と祈りの力をその人生を懸けて証明した。と、本は閉じられている。
高い鍛造の技術力もって、現在、郡上の町での一番を越えて、日本各地に工場を持ち、インドネシア、アメリカにも工場が進出。その主要取引先は、日本の主力自動車メーカのみならず、フォードなどのアメリカビック3をはじめ、欧州のフォルクスワーゲンやポルシェなど、世界の自動車メーカが名を連ねるまでに発展している。
「私の人生は紆余曲折でした」
彼にはさまざまな試練が与えられる。最大の試練は、工場の作業中、自分の確認ミスで、重さ350トンのハンマーを自分の左手に振り下ろしてしまう事故だ。彼は、中指、薬指を失い、何度も絶望感に襲われる。そんな時、彼を励ましたのは、自分の信仰を否定していると思っていた継母の言葉であった。
「澄雄さんには、立正佼成会の教えがあるんでしょう。だからケガに負けないで、立ち向かっていかなあかん」
そして、彼は、自分の心の声を探したという。
「たどり着いたのは、『落ち込んで生きても一生、明るく生きても一生』(中略)どうせ一生過ごすのだから、逆境に打ち克った一生にしようと思ったんです」
彼の、それからの仕事への取り組みは、「逆境に勝る教育なし」の信念を貫くものとなる。
「人は順調に進んでいるときほど、つい慢心になったりするものです。仏さまはそんなときにいつも戒めの心を教えてくれます。立正佼成会の教えにもありますが、逆境はそれを乗り越えられる人にしか与えられません。仏さまから与えられた逆境を、ピンチととらえるかチャンスととらえるか。それを乗り越えることで、人は新しい自分に出会えると思っています」
そんな彼の仕事に打ち込む姿を見て育った2人の息子は、それぞれに工場長となり、跡を継いでいる。
彼は、現在、工場長職から離れ、地域や社会の貢献に力を注いでいる。カンボジアに中学校を建てる活動に寄付を行ったり、サッカーJ2リーグに加盟する岐阜県のホームチーム「FC岐阜」のスポンサー活動や郡上町の「国重文彫刻」活用に寄付したりと、常に前を向いている。
「人はひとりでは生きていけません。皆さまの“おかげさま”で、今日の自分があるのだと日々感謝しています」
今も、恩返しの生き方を貫いている朝日さんだ。この本は、そんな生き方の尊さを証明する内容に溢れている。お薦めの一冊だ。
*この本は自伝として自主出版されております。
お読みになりたい方は、貸し出しますので、「六花の会」事務局まで、お問い合わせください。