2020
01.23

【本のご紹介】会社再建 サラリーマンを超えた男

つなぎあい

 「六花の会」専任講師を務めた福永正三氏(故人)唯一の著作。月1億円の赤字会社を、京セラフィロソフィで、月1億円の黒字会社に変えた「ど真剣のドラマ」が詳述されている。
 京セラが買収した富岡光学㈱は、伝統的に労働組合が強く、経営者と従業員がバラバラだった。稲盛和夫氏が経営改善のために派遣した幹部は二代続けて退陣。最後に派遣されたのが福永氏だった。
 「この会社は心が病気だ」と気づいた福永氏は、「心を治せば、改革ができる」と信じ、一週間操業を止め、社員全員と「自立自活していくためには何をすればいいのか」を心開いて語り合う。そうして出来た改革案「福永百箇条」が会社再建の原動力となる。ど真剣に再建に打ち込む福永氏の姿が、バラバラになっていた経営陣と従業員の心のベクトルを合わせた。
 福永氏が赴任してから、2年10か月後の9月、月に1億円もの赤字を出していた会社は150万円の黒字を出す。その後、業績は鰻登りで好転を続け、6年で月約1億円の利益を出せる会社になり、8年後には年間売上74億円、利益11億4千万をあげるという大変身を遂げて累積赤字を解消した。
 同著は稲盛氏に熱心に勧められ、福永氏が著したもので、推薦文も稲盛氏が書いた。稲盛氏が福永氏に免許皆伝を与えた理由は次の言葉にあったと記録されている。
 
彼はちっとも自慢も、威張りもしません。そして私に言うのです。「会長、こんな素晴らしい仕事をさせていただいて、何とお礼を申し上げていいかわかりません。感謝しようがありません」と。私は、努力の甲斐あって会社も黒字になり、専務として誇りも持てるようになったことを喜んでくれているのだろうと思って、「ほう、何でや」と聞くと、彼曰く、「経営とはこんなに面白いものかと、教えていただいたことにお礼を言いたい。今まで人生には、仕事以外に面白いことがいくらでもあると思っていたが、経営の醍醐味を知った今では、比較になりません」と言うのです。
それを聞いた私は参ってしまって、「あんた、経営者としては免許皆伝ですわ」と、思わず言ってしまいました。
『新版・実践経営問答 こうして会社を強くする』(著・稲盛和夫/編・盛和塾事務局/PHPビジネス新書168)

本のご紹介
『会社再建 サラリーマンを超えた男』
著・福永正三

四六判・上製本/176頁
本体価格1,429円+税
株式会社出版文化社