04.23
【本のご紹介】「成功」と「失敗」の法則
京セラ株式会社名誉会長である稲盛和夫氏が、致知出版社発刊の月刊誌『致知』に寄稿した「巻頭言」を再構成した本書には、一貫して流れる法則が語られている。
それは世の中がどうであろうと、「人間として何が正しいか」を自らに問い、誰から見ても正しいことを、つまり、人間として普遍的に正しいことを追求し、理想を追い続けることの大切さである。
稲盛氏は「反省ある日々を送る」の章で、次のように語っている。
「私は洗面をするときに、猛烈に自省の念が沸き起こってくることがあります。例えば、前日の言動が自分勝手で納得できないときに、『けしからん!』とか『バカモンが!』などと、鏡に映る自分自身を責め立てる言葉がつい口をついて出てくるのです」
「最近では、朝の洗面時だけでなく、宴席帰りの夜などにも、自宅やホテルの部屋に戻り、寝ようとするときに、思わず『神様、ごめん』という『反省』の言葉が自分の口から飛び出してきます」
と、ありのままに語る稲盛氏の凄さが、私のこころに強烈に迫ってくる。
この反省という「心を整える」ことが、一見仕事や人生とは関係ないようであるが、仕事の成果も、人生の業績もすべて、その人の心のままに現れて来る法則であると喝破する。その「心を整える」には、「試練」が必要であると続ける。
巻頭、「試練は、絶好の成長の機会としてとらえることできる人、さらに、人生とは心を高めるために与えられた期間であり、魂を磨くための修行の場であると考えられる人。そういう人こそ、限りある人生を、豊かで実り多いものとし、周囲にも素晴らしい幸福をもたらすことができるのです」と、述べている。
さらに、「企業を発展させていこうとするなら、まずは経営者が人間としての器、言い換えれば、自分の人間性、哲学、考え方、人格というものを、絶えず向上させていくよう、努力を重ねていくことが求められるのです」と結んでいる。
この本を読み終えてみると、この法則は、誰にでも当てはまる法則であることがわかる。企業経営者であろうが、勤め人であろうが、職業の区別もなく年齢の区別もない。『「成功」と「失敗」の法則』は、すべての当てはまる法則であると確信する。
私は、尊敬する先生から数々の教えをいただいているが、あるとき、「生き方の基本は、これだ」と思った言葉がある。「俯仰天地に愧じず」。
これは「孟子」の尽心上からの言葉で、その意味は、「天の神に対しても、地の神に対しても、何ら恥ずべきところがない」。つまり、公明正大であることのたとえである。
尊敬する先生から教えていただいた「俯仰天地に愧じず」。実践するか、しないか。人生の選択は、シンプルにそれしかないと納得させてくれる本である。
本のご紹介
「成功」と「失敗」の法則
著者 稲盛和夫
致知出版社
定価 本体1,000円+税