2021
12.06

【本のご紹介】リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる―はじめて部下を持った君に贈る62の言葉

つなぎあい

 令和3年度「会員総会」で登壇した作家・守屋淳さんが講演中に絶賛したカリスマ社長の名著である。
 1999年、キャノン電子の社長に就任した酒巻久さんは、利益率10%超の高収益企業へと成長させる。その手腕と仕事力は「課長」時代に培われたと語り、「自分と部下を加速度的に成長させる秘訣」を62の言葉にして編んだ。
 「課長」時代の破天荒な仕事ぶりは冒険活劇を見ているようで、あっという間に引き込まれていく。なかでも「人事異動に文句は言わない。誰もやったことがないから面白い」の章には心底感動した。
 「あいつ、また貧乏くじを引かされたな」と、同僚からよく同情された酒巻さんは「不平不満を持ったことは一度もない」「その部署、その分野で第一人者になろう」「だから雑巾がけでもいいと思っていた」と振り返る。そして、つづく文章が光る。

 
  阪急の創業者小林一三氏も言っている。「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ」と。目標を高く持てば、仕事は楽しくなるし、たいてのことは苦にならなくなるものだ。
   (本書33頁)

  ほんとうの一流は、どこへ行っても一流になれる。(略)その理由ははっきりしている。
  一流の人は仕事を選ばない。どこへ異動しても「日本一の下足番」を目指せるからだ。最初から、仕事に向き合う姿勢、心構えが違うのである。
   (本書35頁)

 私事で恐縮だが、30歳の長男から「係長に昇進した」とLINEが来た。真っ先に「この本を買って読んでおけ。必ず、お前の力になる」と勧めた。社会人の息子に、初めて贈る言葉になった。

本のご紹介
リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる―はじめて部下を持った君に贈る62の言葉
著・酒巻 久

文庫判/240頁
本体価格620円+税
朝日文庫