07.21
【本のご紹介】ドラッカーに学ぶ人間学
ピーター・ドラッカーは語っている。
「マネージメントとは科学であり、同時に人間学である」と。
付箋をつけた個所は、数しれず。ドラッカーの本を読むときは、いつも、こうなる。いっそ、この本を丸ごとコピペして紹介したほうが、ドラッカーの真意は伝わると思うのだ。
マネージメント関連本は、管理職になってから人並み以上に読んだし、中国古典をはじめ東洋哲学の関連本も狩猟した。だから、ドラッカーを理解するには「科学」と「人間学」の二軸が必要だと考えている。仏教でいう中道というバランスの中で、人間が活かし、利用していくべきものがマネージメントなのだ。
ドラッカーは「組織は、人間を成長させる道具である」とも語っている。そして、「組織を自らの役に立つものにするためには、自らは何を行うべきか」とつづけ、「われわれは、組織が一人ひとりの人間に対して位置と役割を与えることを当然のこととしなければならない。同時に、組織をもって自己実現と成長の機会とすることを当然のこととしなければならない」と結ぶ。
本書の著者であり、ドラッカー学会共同代表理事の佐藤等は、私たちを次のように導く。
「組織は、社会の道具であるとともに、個人にとっての存在意義を示す道具であるので、組織で働く人が、道具としての組織に使われていると考えるのはまちがいである」
「それゆえ経営者を含め、組織で働くすべての人は、組織という道具を使って世のため、人のために何をなすかという課題に真剣向き合うことが求められる」
本書の出版会社は、月刊『致知』の「特集総リード」をまとめた『人生の法則』で、組織という道具を使って、いかに人生を切りひらいていくかを示唆している。
「運命をひらく」4つの条件
第1条件 「心のコップ」を立てること。
第2条件 「決意」し、それを持続すること。
第3条件 「敬するもの」を持つこと。
第4条件 「縁」を大事にすること。
簡潔に要約すれば、「人の成長のために働かないかぎり、自ら成長することはない」だが、私は第3条件の「敬するもの」を持ち、第4条件の「縁」を大事にすることが経営に大きな違いを生み出すように思えてならない。これは、「六花の会」が願う「仏教精神に学ぶ」に通じている。
本書は、組織人としての学びだけではなく、汲んでも汲んでも枯れない井戸水のように、そして、語っても語っても言い尽くせない聖典のように、人間としてのありようを示唆する宝珠が埋め込まれている。次に読んだときには、どんな宝珠を手にすることができるだろうか。いまから愉しみでならない。
本のご紹介
著者 佐藤等
単行本
定価本体1,600円+税
致知出版社